聖林寺


多武峰(とうのみね)街道の入り口にあたる小高い丘陵上にあるのが国宝十一面観音で知られる聖林寺(しょうりんじ)です。藤原鎌足の長子定慧(じょうえ)の創建と伝えられています。その後再三兵火に合いましたが、鎌倉時代に三輪山の慶円(きょうえん)上人、玄心和上によって再興され、江戸時代には文春和尚によって本尊の子安地蔵菩薩が本堂として祀られ現在に至っています。この子安地蔵は丈六の石仏としては大和第一の大きさで安産と子授けの地蔵として信仰を集めていますが、このお寺の最大の見所は国宝の十一面観音菩薩です。元は大神(おおみわ)神社の神宮寺の大御輪寺の本尊だったのですが明治初年の神仏分離令により廃仏毀釈運動が起こり起こり放出されこの寺が受け入れたものです。その後1891年11月にこの寺を訪れた宮内庁嘱託として来朝中の米人フエノロサに激賞されて以来その芸術的価値が見直されるようになったもので、その美しい姿は多くの人々を魅了してきました。高さ約2m、奈良時代の乾漆像中でも最も形態の整った優品で昭和26年に国宝に指定されています。境内から見る大和平野の眺望も見どころのひとつです。